外出先の駅のトイレでの出来事。
トイレに並んでいると、並んでいた人の1人が、ある一つのトイレを見て急に血相を変えて駅員さんを呼びに行きました。
彼女曰く、自分が朝早くにもこのトイレに来たが、その時からこのトイレのドアの下に同じ荷物が置いてあって、ずっと閉まったままだ、と。もう2時間半以上経つのにそのままだから中にずっと同じ人がいるのではないかと思う、と。
見てみると、トイレのドアの下の隙間から荷物が見えていました。
にわかに並んでいる人全体に緊迫感が流れました。
そうするうちに、女性の職員3人がトイレに駆けつけ、そのうちのボス(?)が問題のトイレの戸をドンドンと激しめに叩きながら、『もしもし、誰かいますか?』と大きな声で何度か声をかけました。しかし、応答なし。
そこで、3人のうちの一番若い人に脚立を持ってくるように命じ、彼女が脚立を持ってくると、ボスはドアの上からトイレの中を覗き見るために脚立に上り始めました。
その時、トイレに並んでいた人たちはみんなかたずをのんでその職員を見つめていました。
私もドキドキしながら「あぁ、駅の職員ってこんな仕事もしないといけないんだな。私には到底務まらないな。」などと思いながら、事の成り行きを見守っていました。正直、生きた心地がしませんでした。
その時、万が一に備えて、知らせを聞いた男性職員も女子トイレに駆け付けました。
そして、そのボスらしき女性職員が脚立に上り切った瞬間、全体の緊張感が最高潮に達し、一瞬静寂になりました。
そしてその職員が上から恐る恐る中を覗き見ると、『お客さん、起きてください!ここはトイレですよ!!』と言いました。どうやら寝ていたようです。
瞬間、緊張感が解けて、トイレに並んでいた人たちがいっせいに「あぁ、良かったわね~」「ほんとによかった!」「死んでたらどうしようかと思ったわよね」などと口々に言い始め、なんだかお互いをねぎらっているようでした。
ちょっと不思議な光景でした。
そこにいた人たちは、たまたまその時トイレに居合わせた人たちであって、お互いに名前も知らない他人同士なのに、その瞬間、みんながずっと知り合いだったかのような雰囲気でした。(笑)
でも実際その時はみんなの心が一つの方向に向かっていたと思います。もしかしたら、死体発見現場に居合わせてしまったかもしれないという、恐怖感・不安感・好奇心等が入り混じった複雑な心境とその後の安堵感。みんな同じだったと思います。
この体験を通して、人ってお互いの事をよく知っているか否かが問題じゃないんだな、と思いました。同じ思いを共有していれば瞬間で一つになれるのだな、と。
そうするうち私の順番が回ってきたので、トイレに入り、外に出ると、もう何事もなかったかのように、無言で並んでいるいつものトイレの風景になっていました。
たった数分の違いでしたけど、今並んでいる人たちは何も知らず、緊迫感もなくただ並んでいるのだろうな、と思いながらその場を立ち去りました。
きっと歴史の現場というのもそんなものなんでしょうね。その瞬間居合わせた人達だけが体験して感じるもので、大多数の人たちは知ることもなく過ぎ去るもの。
今回は地球の片隅で起きた、ニュースにもならない小さな出来事でしたけど、私にとっては一大事件でした。
神様が私に貴重な体験をさせてくだり、様々な思いと悟りを与えて下さったことに感謝します💛